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NASAの研究員、一児の父、そして著者。それ、どうやって両立するの? ― 小野雅裕さんに「時間の使いかた」を尋ねてみた(後編)

普段は「時間がない日々を乗り越えるさまざまな知恵」を記事として配信している時間がないドットコム。ですが、今回は特別編。「あの忙しそうな人は、どうやって時間をつくっているのだろう?」という、そんな素朴な疑問を、直接本人にぶつけてしまおうと考えました。

取材相手は、NASAの研究員であり、一児の父でありながら、この春に出版した小野雅裕さん。肩書だけで、もう忙しそう。「宇宙兄弟」のムッタが表紙を飾る『宇宙に命はあるのか』という新書を、本屋の店頭で見かけたことがある人もいるかもしれません。その著者のかたです。

この小野さんに、日々の時間のつくり方や、執筆ペースなどを伺ってみました。本人はあまり工夫をしている自覚がないみたいでしたが、突っ込んで聞いてみるといくつか特徴が見えてきて……。前編はこちら

小野雅裕/おの・まさひろ NASA JPL 技術者、作家。大阪生まれ、東京育ち。2005年に東京大学工学部航空宇宙工学科を卒業し、2012年にマサチューセッツ工科大学に入学。慶應義塾大学理工学部助教を経て、2018年4月現在、NASAのJPL(ジェット推進研究所)に所属する。阪神ファンで、愛娘・ミーちゃんのパパ。

オーディオブックは良かった。月に1冊、読める本が増える。

—— 執筆中も含めて、本はいつ読むのですか?

小野 そうだ。コツといえば、オーディオブックがありました! 自動車の通勤中にオーディオブックを聞きはじめてみたんですが、それが案外よくって。

—— 日本ではまだ普及していませんが、アメリカではしばらく前から利用者が多いみたいですよね。自動車文化だからかもしれませんが。

小野 ですね。僕も通勤が、車で往復40分あるので、週5日往復しているとすると合計3時間くらい。英語の本ってだいたい一冊10~15時間くらいの分量なので、約1ヵ月で1冊読めちゃうんですよね。特に執筆しているときは、必要な情報収集として本も読んだんですけど、基本的にオーディオブックで読みました。

—— 聞くだけで内容わかるものですか? 私は聞き流しちゃいそうで……。

小野 一見お金の無駄のようにみえるんですけど、オーディオブック版と紙版の両方を買うんです。やっぱりオーディオブックは頭の入りがわるくて、すぐ忘れてしまうんですよね。だから、オーディオブックで片道20分聞いて「これは使える!」「いい!」と思った内容は、車をとめた時に、助手席に置いておいた紙版の本に線を引いたりページを折ったりしてました。あと、Kindle版も使って後から検索したりもしましたね。

—— なるほど! ところで、それまで車の時間は何をしていたのですか。

小野 音楽を聴いてましたね。オーディオブックを使いだして、月に1冊読める本が増えると、ぜんぜん違いますよね。

いいものをつくるには時間がかかる。粗悪乱造しても仕方がない。

—— すこし質問が変わるのですが、小野さんの「時間への考え方」って、普通の人と異なるのでしょうか。

小野 変わらないと思いますよ(笑)。けれど例えば、2週間に1度、妻と娘に会いに日本へ帰っていると言うと「よくやるね」と言われるんです。時間や体力もかかりますし、なによりお金が猛烈に減っていきますので、そういう反応も当然ですよね。けれど僕がいつも答えていたのは、「お金は稼げば返ってくるけど、娘が1歳のころの時間は戻らないから」という考えです。

—— なるほど。お話をしていて、自分の人生を、1つの大きな流れとして価値あるものにしたいという意識がどこかにあるように感じます。目の前の一瞬でも無駄にしない、というほどの時間間隔ではないのですが、自分のできる範囲で価値を最大化しようというか。

小野 僕は、時間のスパンを長くもつタイプだと思います。宇宙をテーマにしているうちの性質上、まず1年より短いプロジェクトは珍しいんですよね。数年単位のプロジェクトが多い。また、僕はエンジニアですが、エンジニアリングっていうのは、いいものをつくるのに時間がかかるんですよ。間違いなく。

—— 小野さんにとって「あたり前」のことをお話されていると思うのですが、一方で世の中では、いいものをつくることを目指しているのに時間をかけない、という風潮がある気がします。

小野 音楽でも、映像でも、芸術でもなんでもそうで。時間をかければいいものができる訳ではないけれど、かけられる時間が少ないと、やっぱりいいものができないですよね。本なんかもそうだと思う。

—— 今回出版された『宇宙に命はあるのか』は、どのくらいの時間で執筆されたんですか?

小野 今回の本も、前作の『宇宙を目指して海を渡る』も、2年くらいかけたんじゃないかな。出版社側としては急ぎたい理由もいろいろとあったようなのですが、なだめながら文章を何回も推敲してました。もう何回推敲したか覚えていませんが。

あと、2週間に2回書くペースで2年かかった原稿だから、毎日毎日書いたら3ヵ月で書けたか、というと、そうじゃないと思うんですよ。やっぱり2年間掛けてた間に自分も成長するし、文章を一度寝かせて読むこともできる。特に僕の場合、執筆業はあくまで「副業」ですから、粗造したものをつくる意味もないんですよね。

—— つくるからには、とことん質を高めると。

小野 ぶっちゃけると最近、本って粗造品ばかりじゃないですか。けれど、つまらない本を量産して一冊100万円ずつ稼いでも何になるのか。それよりも、人生で一冊でもいいんで名作が出せたほうが意味があると思うんです。だから本は、もし次も書くとしても、数年後か5年後、あるいは10年後かなって思ってます。

—— 小野さんの言う「意味がある」は、自分にとって、であると同時に、世の中にとって、なんですね。きっと。

小野 本業のほうも、そういう考えです。今手がけている火星のプロジェクトは2020年までのもの。その次に入ったものは2030年代に向けたもので、この2つは「地球外生命探査」に関するものなんですよ。もし、この2つのどちらかのプロジェクトが地球外生命を発見したら、人類の教科書に残るくらいのものになると思います。そんなプロジェクトにちょっとでも関われたら、自分の仕事としては満足いくと思うんです。

—— 大満足ですね。

小野 仕事は、一生かけて急いで行えば、何十も何百もプロジェクトに関われるとは思うんです。けれど、人類の歴史に残るプロジェクトなんて、そうそうないじゃないですか。僕は、そういうものが、1個でも2個でもあればいいと思うから。だから仕事に関しては、長い時間スパンで、ロングスケールで考えているんです。

ただ一方で、限られた時間のなかで、自分の力を伸ばさなければいけないとも思います。その点からは、焦ることもありますね。もう35歳ですし。まとめると、アウトプットに関してはロングスケールで考えているけれども、自分の能力向上に関しては常にアップデートしたい、という意識を両方もっています。

小野さんのもつ連載「宇宙人生」より

若いころは「ワークライフバランス、クソ食らえ」と思っていたけど、子どもができると「バランスが大事」と考えも変化。

—— 自分が存在してる意義とか、自分じゃなきゃできないことなのか、とか。そういうオリジナルの価値をもとに自然と優先順位を付けているので、必然的にそれ以外のことが切り捨てられている。そんな印象を受けました。

小野 そうなんですかね。けど、まず世界で「自分にしかできない」ことの第一は、ミーちゃんのパパだってことは、間違いないですね(笑)。

—— ですね(笑)。だから、その優先順位は何よりも高いと。

小野 はい。どこにも代わりはいないから(笑)。まぁ、あとは「妻の夫」ということもありますが。どちらも間違いないですね。

会社では、家族を犠牲にして上りつめている人も多くいるんです。もちろん自分はどちらも両立できたらいいと思っていますが、1日24時間しかないからどうしようもないことはありますよね。なので、そのバランスをどうするかは、自分でも分からないながら、決めるしかない。本の執筆とかは、もしかしたら余分なことかもしれない。ミーちゃんが第一とは言っても、けれど24時間をミーちゃんに使うわけにもいかない。そしたら生活するお金も稼げないですし、なにより、ミーちゃんが誇りに思ってくれるようなパパになりたいですからね。仕事でも光ってなきゃ、と思うんです。

かといって、仕事ばっかりやって光っていると思っていても、ミーちゃんと遊んであげられないってなると、それもまた違うと思うし。だからそこは、優先順位というか、バランスですね。若くて娘が生まれる前は「ワークライフバランス、クソ食らえ」と思って仕事ばかりしていましたけれど、やっぱり子どもができると考えも変わって、いまは「バランス大事だな」って思っています(笑)。

—— 家族との時間は、どのくらい使っているのですか?

小野 この1年は離ればなれだったので何とも言えませんが、ミーちゃんといるときは、夜は基本的に7時くらいには帰っています。うちの職場はけっこうフレキシブルに働けますし、かつ、家で仕事してもまったくOKなので、朝はふつうに出勤して夜は7時に帰り、家族とご飯を一緒に食べて、ミーちゃんを寝かせて、寝たらもうひと仕事して明日に備える。そんな感じですね。

—— 寝かしつけた後に仕事、っていうのはすごいですね。なかなか上手くはいかなさそう。

小野 今度一緒に暮らすようになったら、実際は、いかないでしょうね(笑)。一緒に寝ちゃうだろうな。

―― (笑)。

小野 だからミーちゃんが来たら、1日9時間の仕事時間は、今まで以上にしっかり集中しないと、本当にやばいなって思ってます。がんばらなきゃ。

 

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